■役員退職金の準備を全額損金で準備していますか?
役員退職金を準備する方法として、生命保険を利用している役員の方は多と思います。
理由は
①保険料の一部を損金にできるため節税できる
令和元年7月までに契約した長期定期保険は、保険料の1/2を損金にできるということで
役員退職金を準備する方法として多くの保険会社が勧めていました。
②70歳前後の役員退任時に返戻率がピークを迎える
長期定期保険は、100歳満期のように保険期間が長いため、前払い保険料が解約返戻金
として積み立てられます。
そのため、支払保険料総額の9割近くが勇退する年齢である70歳前後でピークを迎えます。
保険料の半額が損金になり、返戻率が9割を超えると実質返戻率は
年払保険料190万円×28年=5,320万円
節税額 5,320万円÷2×法人税率30%=798万円
解約返戻金5,320万円÷(5,320-798)=117.6% となり、1億円の死亡保障がありながら
税引後の効果は100%を超えるということで、役員退職金の準備として利用されていました。
しかし、税制変更により、令和元年7月8日以後に加入する生命保険は
損金の割合と返戻率が大きく下がりました
最高解約返戻率 | 取扱い |
50%以下 | 全額損金 |
50%超70%以下 | 契約期間の4割までは60%を損金 |
70%超85%以下 | 契約期間の4割までは40%を損金 |
85%超 | 当初10年間 保険料×最高解約返戻率×0.1 を損金 |
ここまで下がると、節税効果を考慮しても実質返戻率は100%を超えません。
年払保険料200万円×10年=2000万円
節税額 2000万円×0.4×法人税率30%=240万円
解約返戻金 1700万円÷(2000-240)=96.5%
生命保険を活用するメリットがなくなっても大丈夫です。
毎月の掛金を、全額損金にできる制度があります。
企業型確定拠出年金は全額損金で役員退職金が作れます!
企業型確定拠出年金は、社員の退職金の準備として大手企業で採用されていますが
実は、役員だけでも、1人だけでも加入できる制度です。
役員だけで加入しても、掛金は「福利厚生費」として税務上「全額損金」として計上できます。
そして、小規模企業共済や中退共のように掛金の運用を任せるのではなく、自分で選んで運用
することができるので、資産を大きく増やすことができます。
ただし、掛金の上限は月額5万5千円と決まっていますので年間66万円までとなります。
年間66万円を全額損金に計上できるので、節税額は法人税率30%で20万円になります。
25年間利用すると、節税額は500万円になるので税引後の負担額は1,150万円です。
25年間の元金は1,650万円なので、全く運用しない場合でも実質返戻率は143%になります。
毎月の掛金5万5千円を運用するともっと凄いことになります。
25年間で5千万円の退職金を作れます!
アメリカの代表的な株価指数「S&P500」に投資するインデックスファンドで、1988年1月から
2023年1月までほったらかしで運用すると、受取額は1月の時点で5,527万円にもなります。
ITバブルの崩壊、リーマンショック、コロナショックといった大きな下落に見舞われながら
長期積立投資であればここまでの運用成果になります。
25年間で5倍になる役員退職金!
毎年の負担額66万円-節税額20万円=税引後負担額46万円
46万円×25年間=累計税引後負担額 1,150万円・・・・・・①
積立元金1,655万円+運用益3,872万円=5,527万円・・②
なんと、②÷①=4.8倍にもなります。
しかも、役員を退職しなくても退職所得として受け取ることができます。
詳しくはこちらをご参照ください。
退職しなくても受け取れる役員退職金【企業型確定拠出年金】を知っていますか?
このように、役員退職金を企業型確定拠出年金で準備するとトリプルメリットがあります。
①掛金が全額損金に計上できる
②運用することで受け取る金額を大きく増やすことができる
③役員を退職しなくても受け取れる
株式会社金融財務研究所
1級FP技能士 本川吉弘