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【iDeCo最新動向】掛金上限引き上げは“先送り”へ 年金制度改革の行方は?
2025年4月、政府は個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金上限引き上げを含む制度改正について、「先送り」の方針を固めたとの報道がありました。これにより、多くのiDeCo加入者が期待していた“節税メリットの拡大”は当面見送られることになります。
【企業向け解説】iDeCoの掛金上限引き上げ「先送り」の影響と今後の対応方針
2025年4月、政府は個人型確定拠出年金(iDeCo)の制度改正のうち、掛金上限の引き上げを含む一部内容について、「今国会での法案提出を見送る」方針を固めました。企業型DC(企業型確定拠出年金)との併用者を含む制度利用者にとっては大きな制度改善が期待されていただけに、関心が高まっています。
本稿では、この「先送り」が企業経営や人材戦略にどのような影響を与えるのか、制度的な背景と今後の展望を踏まえて解説します。
■ 改正のポイントと「先送り」の背景
昨年12月に閣議決定した2025年度税制改正大綱には、月額上限の掛金を6万2千円に引き上げることが盛り込まれていました。
企業型DCとiDeCo併用時の掛金上限を5万5千円→6万2千円に引き上げ
企業年金がない場合は2万3千円→6万2千円に引き上げ
これらは「個人の自助努力による老後資産形成を促す」ことを目的としたもので、特に人的資本経営が叫ばれる中、企業にとっても有力な福利厚生ツールとなることが期待されていました。
しかし、今回の法案見送りの主因は、「年金制度全体の改革」に関する法案(年金制度改革関連法)の審議を優先する政府方針にあります。限られた国会審議時間の中で、優先順位を見直した結果、iDeCo関連の詳細改正は後回しとなった模様です。
■ 現行制度における掛金上限の比較
現行制度下における各属性ごとの掛金上限を比較したものです。
自営業者:年間81.6万円、月額6万8千円
会社員(iDeCo単独加入):年間27.6万円、月額2万3千円
企業型DCのみ加入している場合:企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合計が月額55,000円以内で、かつiDeCoの掛金は月額20,000円が上限
企業型DCと確定給付企業年金(DB)に加入している場合:企業型DCの事業主掛金とDB等の他制度掛金相当額、そしてiDeCoの掛金の合計が月額55,000円以内で、かつiDeCoの掛金は月額20,000円が上限
企業型DC導入企業において、従業員がiDeCoを併用できるケースは限られていたので、「掛金上限引き上げ」に期待が集まっていました。
■ 企業が今できる対応策
① 選択制企業型DCの導入
選択制企業型DCは、従業員が給料の中から掛金を拠出する仕組みなので、iDeCoと同じような使い方ができます。加入する、しないは個人の選択なので、加入しない人がいてもかまいません。また、掛金の変更も自由にできるので、従業員の選択肢を増やすことが可能です。
② 情報提供・教育の強化
従業員に対して、確定拠出年金制度の意義や、iDeCoの活用方法について社内研修や説明会を実施することも有効です。「制度があっても知らない・活用できない」という状況を防ぐ施策が求められます。
■ 今後の展望と企業経営への示唆
政府は「改正そのものの棚上げではない」としています。つまり、制度見直しの議論は今後も継続し、2025年度後半以降の法案提出も視野に入っていると考えられます。
人材確保・定着がますます難しくなる中、企業がどのように従業員の「老後の安心」をサポートできるかは重要な経営課題です。税制優遇を活かした資産形成支援は、その一翼を担う戦略として、今後も注目が集まるでしょう。
■ まとめ
iDeCoの掛金上限引き上げは「今国会での提出見送り」となったが、将来的な実現可能性は残されている。
企業としては、選択制DC制度の導入で福利厚生設計が可能。
人的資本経営の一環として、従業員の資産形成支援を積極的に推進。