企業型確定拠出年金の退職手続きについて教えて

企業型確定拠出年金を、受け取るまでに退職した場合の手続きについて解説します。
企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している会社で、従業員が退職する際に注意すべきポイントを考えてみましょう。

1.退職後の進路に応じた手続きが必要

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)に加入している従業員が退職する場合、退職後の進路によって異なる手続きが求められます。
転職先に企業型DC制度がある場合、逆に転職先に制度がない場合や他の制度への移行も考えられます。
さらに、自営業への転身や公務員への移行など多岐にわたる選択肢があります。

2.転職先に企業型DCがある場合

転職先に企業型DC制度が導入されている場合、従業員はそのまま企業型DCに加入することができます。
転職先の会社に、自分が確定拠出年金に加入していることを伝え、会社が契約している運営管理機関へ「資産移換依頼書」などの書類を提出します。
確定拠出年金口座にある金額を全額、転職先の口座に引き継ぐ手続きをしますが、退職した会社で選んでいた金融商品から、新しい会社の制度にある金融商品へ選び替えなくてはなりません。
iDeCoと併用するときは、企業型DCのみ加入している場合はiDeCoの掛金は2万円まで、ただし企業型DCとの合計は5.5万円以内となります。

3.転職先に企業型DCがない場合

転職先に企業型確定拠出年金がない場合、企業型DCの利用はできません。脱退一時金の要件は厳しいので、企業型から個人型確定拠出年金に資産を移さなければなりませんまずは、企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失し、個人型確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設します。次に、既存の企業型確定拠出年金の資産を個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換します。iDeCoの口座を開設する金融機関をどこにするかの判断基準は、月々の費用が安いことと、運用商品が多い金融機関がお勧めです。iDeCo手数料比較

4.自営業をする場合、仕事をしない場合

退職後、自営業を始める場合や無職となる場合、iDeCoへの移行が選択肢となります。iDeCoに加入する場合は、最大月額68,000円までの掛金を拠出して、資産を運用することができます。 国民年金の被保険者であればほとんどの方が加入できます。(国民年金保険料の免除又は猶予を受けている方、公的年金を受給された方、個人型確定拠出年金(iDeCo)の老齢給付金を受給された方は原則加入できません。)

5.第3号被保険者-専業主婦(夫)になる場合

退職後、専業主婦(夫)となる場合には、iDeCoへの移換が可能です。その場合の選択肢は2つあります。自分で掛金を拠出して積み立てを続けていく場合は、加入者として月額23,000円まで掛金を拠出することができます。掛金を拠出せず、在職中に積み立てた資産の運用だけを行っていく場合は、 iDeCo の「運用指図者」になります。

6.脱退一時金を受け取る

2017年1月以降に加入資格を喪失した方は、次の要件①・②をすべて満たしていれば脱退一時期を受け取ることができます。

要件①

年金資産が15,000円以下で、次の要件をすべて満たしていること
・企業型DC、iDeCoのいずれかの加入者、運用指図者でないこと
・加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6ヵ月を経過してないこと

要件②

次の要件をすべて満たしていること
・60歳未満であること
・企業型DCの加入者でないこと
・iDeCoに加入できない者であること
・日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
・障害給付金の受給権者でないこと
・通算拠出期間(*1)が5年以内、または個人別管理資産額が25万円以下であること
・最後に企業型DCまたはiDeCoの資格を喪失してから2年以内(*2)であること
(*1)通算拠出期間については法令等をご確認ください。
(*2)企業型DCの加入者資格を喪失してから6ヵ月以内の場合は、企業型DCより直接脱退一時金を請求することができます。

7.期日を守る

退職前の企業で確定拠出年金に加入していた場合、企業型DCの加入資格を喪失した日から6ヶ月以内に移行手続きを行う必要があります。退職後は必ず移換手続を行うようにしましょう。手続きをしないまま期日を過ぎると、自動的に積立金が移換される年金資産を運用できないことに加え、手数料が差し引かれ続けるといったデメリットが生じてしまいます。また、転職先で確定拠出年金に加入できない場合や無職や専業主婦になる場合、自営業者や公務員になる場合にはiDeCoへの移換手続が必要です。いずれの場合であっても6ヵ月以内に手続きを行う必要があるため、余裕をもって手続きを行うことをおすすめします。

退職者の多様な進路に対応するため、企業型確定拠出年金の手続きは適切に行う必要があります。従業員の将来に向けた経済的な安定を支えるため、正確な情報と適切なアドバイスを提供することが求められます。

Youtubeチャンネル
はこちら

お金のお悩み、動画内の図解ですっきりわかりやすく解説しています。
お役立ち情報満載ですので、ぜひご覧ください。

TOP