年金

役員が企業型DCに加入するメリットと注意点——経営者が知るべきポイント

この記事でわかること

  • 役員が企業型DCに加入できる条件と加入できないケース
  • 役員が企業型DCに加入するメリット(税務・老後資産・報酬設計)
  • 注意すべきデメリットと実務上のポイント
  • 役員報酬・退職金制度と企業型DCの組み合わせ方
  • 経営者が制度を活用するための具体的な考え方

結論:役員も企業型DCを活用できる——ただし条件と設計が重要

「役員も企業型DCに入れるのですか?」

中小企業の経営者からよく聞かれる質問です。

答えは「条件を満たせば加入できます」です。一定の要件を満たす役員は、企業型DCに加入することができます。そして、適切に活用すれば、老後資産の形成・役員報酬の最適化・退職金設計の補完など、経営者にとって有効なメリットをもたらす可能性があります。

ただし、役員の加入は設計を誤ると税務・法務上のリスクにつながることもあります。本記事では、役員と企業型DCの関係をわかりやすく解説します。

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役員が企業型DCに加入できる条件

「厚生年金被保険者」であれば加入可能

企業型DCの加入対象は、原則として「厚生年金被保険者」です。厚生年金に加入している役員であれば、企業型DCへの加入が認められる場合があります。

具体的には、以下のような役員は加入対象になりえます。

  • 使用人兼務役員(取締役部長・取締役営業部長など)
  • 代表取締役や取締役で、実態として会社と雇用関係が認められる場合
  • 中小企業の経営者で、厚生年金に適法に加入している場合

加入が認められない・難しいケース

以下のような場合は、加入が認められないか、加入の適否について確認が必要です。

  • 厚生年金に加入していない役員(一人会社の代表者で未加入など)
  • 加入対象者の設計において役員を意図的に除外している場合

加入の可否は、役員の実態・会社の規程・制度設計によって異なります。必ず専門家や運営管理機関に確認してください。

役員が企業型DCに加入するメリット

メリット1:掛金が税務上の費用として処理できる

企業型DCの掛金は、会社が拠出した場合、全額を損金算入できます。役員報酬を増やす場合と比べて、社会保険料の対象にならず(設計によります)、税務上の費用として処理できる点が特徴です。

なお、役員本人にとっても、拠出された掛金は給与所得として課税されず、将来の受取時に退職所得・雑所得として処理されます。長期で積み立てることで、税負担を将来に繰り延べる効果があります。

メリット2:老後資産を会社の制度として積み立てられる

経営者は会社経営に集中するあまり、個人の老後資産形成が後回しになりがちです。企業型DCを活用することで、会社の制度として計画的に老後資産を積み立てられます。

また、企業型DCの資産は会社の財産ではなく、個人別管理資産として外部の信託銀行等で管理されます。会社が倒産しても、積み立てた資産は保護されます。

メリット3:役員報酬・退職金の設計に組み込める

中小企業の経営者にとって、役員報酬と退職金の設計は節税・老後設計に直結する重要な課題です。企業型DCは、この設計の選択肢のひとつとして活用できます。

たとえば、役員報酬を一部減らして企業型DCの掛金に充てる設計(選択制DCに近い考え方)や、社員向けの企業型DCと同じ制度のなかで役員の掛金を設定する方法があります。

メリット4:退職後の受け取り方を選択できる

企業型DCの受け取り方は、一時金・年金・両方の組み合わせから選べます。退職所得控除を活用できる一時金受取は、長期勤続の経営者にとって税務上有利になる場合があります。

ただし、退職一時金との合算計算が必要になるため、受け取り方の設計は税理士と相談することをおすすめします。

役員が企業型DCに加入する際の注意点

注意点1:掛金の恣意的な設定はリスクになる

企業型DCの掛金は、会社の規約に基づいて設定します。特定の役員だけに有利な掛金を設定したりすると、税務調査で問題になる可能性があります。

役員への掛金は、制度全体の設計との整合性を確認したうえで設定する必要があります。

注意点2:退職一時金との調整が必要

企業型DCの掛金上限は、他の企業年金(退職一時金制度・DB・中退共)との関係で制限されます。既存の退職金制度がある場合は、上限額の計算と調整が必要です。

注意点3:60歳まで引き出せない

企業型DCで積み立てた資産は、原則として60歳まで受け取れません。会社が急に資金を必要とする状況になっても、企業型DCの資産は使えません。事業資金とは切り離して管理することが前提です。

注意点4:運用リスクは役員自身が負う

企業型DCでは、加入者本人が運用商品を選択します。元本確保型商品を選ぶことも可能ですが、投資信託を選んだ場合は元本割れのリスクがあります。リスク許容度に応じた運用設計が求められます。

注意点5:会社規約・就業規則の整備が必要

企業型DCを導入するには、会社規約(DC規約)の策定と厚生労働大臣への承認申請が必要です。役員の加入条件を規約に適切に定めるためには、専門家の関与が不可欠です。

役員報酬・退職金制度と企業型DCの組み合わせ方

組み合わせパターン1:役員報酬 + 企業型DC

役員報酬は毎月の固定報酬として設定しながら、企業型DCの掛金を会社が別途拠出するパターンです。役員の可処分所得は役員報酬で確保しつつ、長期的な老後資産を企業型DCで積み立てます。

組み合わせパターン2:役員退職金 + 企業型DC

役員退職金制度(退職慰労金規程)を維持しながら、企業型DCを追加で活用するパターンです。退職一時金で「確定した退職給付」を提供しつつ、企業型DCで「運用次第で増やせる資産」を積み立てます。

ただし、企業型DCと退職一時金の合算で掛金上限の制約を受ける場合があるため、設計段階で確認が必要です。

組み合わせパターン3:役員報酬の一部を掛金へ転換(選択制DC的な設計)

役員報酬の一部を企業型DCの掛金として拠出する設計です。役員の手取りは一部減りますが、その分が老後資産として非課税で積み立てられます。役員自身の老後設計に関心が高い場合に適しています。

この設計は、給与設計・社会保険・税務との整合性が複雑なため、必ず専門家と設計内容を確認してください。

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中小企業の一人社長・家族経営の会社の場合

一人社長・家族経営の会社(役員が経営者と家族のみ)の場合、企業型DCの加入可否や設計には特別な注意が必要です。

  • 厚生年金への加入状況の確認が必要
  • 加入対象を役員のみにする規約設計は、税務上・法律上の整合性が求められる
  • 家族役員全員を対象にする設計は、各自の報酬・雇用実態との整合が必要

一人社長・家族経営の会社が企業型DCを導入する場合は、早い段階で専門家に相談することを強くおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 代表取締役一人の会社でも企業型DCを導入できますか?

A. 一定の要件を満たせば可能な場合があります。ただし、厚生年金の加入状況・雇用実態・制度設計によって異なります。「一人でも導入できる」と言われることがありますが、すべてのケースで認められるわけではないため、必ず専門家に確認してください。

Q2. 役員だけを対象にした企業型DCを導入できますか?

A. 規約の設計によっては可能なケースがありますが、「役員のみを対象にした制度」は税務上・法律上の問題が生じる可能性があります。通常は社員も含めた設計のなかで役員も対象にする形が多いです。専門家との慎重な設計が必要です。

Q3. 役員の企業型DC掛金は、役員報酬として課税されますか?

A. 会社が拠出した企業型DCの掛金は、役員の給与所得として課税されません(給与として受け取った場合とは異なります)。受け取り時に退職所得・雑所得として課税されます。ただし、設計によって取り扱いが異なる場合があるため、税理士への確認を推奨します。

Q4. 役員が退職した際、企業型DCの資産はどうなりますか?

A. 役員が退職(会社を離れる)した場合、企業型DCの個人別管理資産は、転職先の企業型DCやiDeCoへ移換するか、一定の手続きを行って60歳以降に受け取ります。資産は外部管理のため、会社への返還は不要です。

Q5. 役員の企業型DCと退職慰労金は両方使えますか?

A. 両方を活用することは可能ですが、退職一時金と企業型DC(一時金受取)を同一年に受け取る場合は、合算して退職所得控除を計算する必要があります。どちらを先に受け取るか・受け取り方をどう設計するかは、税理士とよく相談してください。

Q6. 企業型DCの掛金はいくらまで設定できますか?

A. 企業型DCの掛金上限は、他の企業年金の有無により異なります。他の企業年金がない場合は月額5万5,000円、確定給付型の企業年金と併用する場合は月額2万7,500円が上限です(2024年10月以降の改正後の内容を含むため、最新の制度内容は厚生労働省等の公的情報をご確認ください)。

まとめ

役員が企業型DCに加入することは、条件を満たせば可能であり、老後資産形成・税務上のメリット・退職金設計の補完として有効な場合があります。

一方で、役員加入には設計上の注意点が多く、税務・法務・社会保険の観点から専門家とともに慎重に進める必要があります。「役員も入れると聞いたのでとりあえず導入したい」という判断は、後々の問題につながることがあります。

「自社の役員構成でどう設計できるか」「役員報酬・退職金とどう組み合わせるか」について具体的に検討したい場合は、まずは個別相談からお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修・執筆:金融財務研究所
企業型DC・退職金制度・役員報酬設計・財務改善に関する相談を中小企業向けに行っています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。税務・社会保険・労務上の取り扱いは、会社の状況や制度設計によって異なります。導入判断にあたっては、税理士・社労士・運営管理機関等の専門家にご確認ください。

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