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企業型確定拠出年金(企業型DC)の最新実態調査から見える動向
2023(令和5)年度の「企業型確定拠出年金実態調査結果(概要版)」が企業年金連合会より公表されました。本調査は、企業型DC制度の設計、資産運用状況、ガバナンス体制などの現状を把握することを目的として実施されたもので、調査対象は企業型DCを実施している事業主2,000件、うち852件から有効回答が得られています。この調査結果概要版から、企業型DCにおける「運用商品の状況」について解説します。(グラフは企業年金連合会「2023(令和5)年度 企業型確定拠出年金実態調査結果(概要版)」より)
運用商品の提供状況
調査によると、企業型DC制度で提供されている運用商品は、平均で21.4本。提供できる本数は3本以上35本以下の範囲に収まっており、以下のような構成になっています。
- 元本確保型商品(預金・保険など):平均4.4本(前回4.6本)
- 預金:2.3本(前回同数)
- 保険:2.1本(前回2.3本)
- 投資信託:平均17.3本(前回16.8本)
- パッシブ型:10.4本(前回10.0本)
- アクティブ型:6.6本(前回6.4本)
弊社の企業型DCは、元本確保型4本、投資信託25本、合計29本となっています。
ラインアップ見直しの動き
調査期間中に商品ラインアップの見直しを実施した企業の動向は以下の通りです。
- 「追加・除外を行った」企業:5.1%(前回3.9%)
- 「追加のみ」:30.2%(前回18.2%)
- 「除外のみ」:0.3%(前回0.1%)
- 「見直しを行っていない」企業:64.5%
- 「今後の見直しを検討している」企業:
- 追加・除外:9.8%(前回4.1%)
- 追加のみ:22.2%(前回18.5%)
- 除外のみ:3.4%(前回2.3%)
見直しをしていない企業が2/3もあります。弊社では、アメリカの株価指数S&P500やNASDAQ100に連動するパッシブ運用の投信を追加して、加入者の要望に応えています。
企業型DCをどこから導入するかの決め手は、商品の追加をしているかどうかが重要な要素になります。
加入者の資産配分
加入者の資産配分に関して、次の傾向が見られます。
- 資産残高ベース:
- 投資信託:63.1%(前回57.5%)
- 元本確保型商品:36.7%
- 掛金ベース:
- 投資信託:63.8%(前回59.7%)
- 元本確保型商品:35.9%
投資信託への配分が増加している一方で、元本確保型商品のみで運用している加入者の割合は24.5%(前回27.5%)に減少。さらに、この割合が8割を超える企業は2.4%(前回5.7%)と大幅に減っています。指定運用方法(デフォルト投資)を採用している企業は40.7%で、うち33.7%がバランス型投資信託を選択しています。
弊社では、導入時の運用説明会、毎年無料で行う継続教育の時に、長期・積立であれば株式型の投資信託のリスクは低く、リターンを期待できると説明しています。
このグラフは、「長期投資の重要性」を裏付けるものです。短期的な上下動はあっても、20年というスパンで見れば、多くの期間で年平均7.3のリターンが得られていたことがわかります。
運用パフォーマンスの改善
- 2023年度(2023年4月~2024年3月)の平均運用利回り(年率):13.3%(前回1.8%)
- 制度導入からの平均運用利回り(年率):6.9%(前回3.1%)
運用環境の改善により、パフォーマンスは大幅に向上しています。
2013年12月から2025年4月までの各投資信託の利回りは以下の通りです。
日経平均株価のインデックスファンド 9.89%
外国株式のインデックスファンド 14.1%
S&P500のインデックスファンド 15.55%
NASDAQ100のインデックスファンド 16.35%
企業の教育・モニタリング体制
- 継続投資教育の実施率:80.0%(前回79.4%)
- 過去3年以内の実施:89.6%
- 教育手段:社内報・メール(52.4%)、動画視聴(40.4%)、集合研修(38.9%)、オンラインセミナー(35.6%)
- 加入者の運用状況や商品に関するモニタリングレポートを確認している企業:88.9%
継続教育を実施ていない企業が1割もあります。継続教育を実施しないと、最初に決めた資産配分を見直すことができません。継続教育を毎年実施することで、この制度は多くの社員に普及できます。
今回の調査の意義
今回の調査結果から、企業型DC制度において運用商品は多様化しつつも、投資信託、特にパッシブ型へのシフトが進んでいることが分かります。また、企業の約半数が商品ラインアップの見直しを実施または検討しており、制度の柔軟な運用体制が整いつつあります。
特筆すべきは、2023年度の運用利回りが13.3%と過去にない高水準を記録した点です。これにより加入者の資産形成にも大きな追い風が吹いていると言えるでしょう。
さらに、企業側の教育・モニタリング体制も着実に整備されており、ガバナンスの観点からも進展が見られます。
今後も制度の動向や加入者行動の変化を継続的に追っていくことが重要です。