iDeCo改正で企業型DCはどう変わる?中小企業の対応

iDeCoや企業型DCへの関心が高まっています。

社員から、「iDeCoは改正でどう変わるのか」「企業型DCに入っていても使えるのか」と聞かれる会社も増えるかもしれません。

特に企業型DCを導入している会社では、社員への説明が大切です。制度改正の内容を誤って伝えると、老後資金づくりや税務上の判断に影響する可能性があります。

なお、添付記事では2027年1月からの改正として紹介されています。一方、厚生労働省の公表情報では、iDeCoの加入可能年齢の引き上げや拠出限度額の引き上げは、2026年12月1日施行予定とされています。公開前には必ず最新情報をご確認ください。

参考:厚生労働省 2025年の制度改正

iDeCo改正で注目されるポイント

今回の改正で注目されるのは、主に次の3点です。

  • iDeCoの拠出限度額が引き上げられること
  • 企業型DC加入者のiDeCo上限枠が見直されること
  • 加入可能年齢が70歳未満まで広がる予定であること

特に中小企業の経営者や人事担当者は、社員から質問を受ける可能性があります。制度の概要だけでなく、自社の企業型DCとの関係を整理しておくことが大切です。

iDeCo拠出限度額はどう変わるのか

添付資料の内容をもとに、iDeCoの拠出限度額を整理すると次のようになります。

区分 現在の拠出限度額 改正後の拠出限度額 確認したいポイント
会社員
企業型DCなし
月2万3,000円 月6万2,000円
年間46万8,000円増
企業年金がない会社員は、拠出枠が大きく広がる可能性があります。
会社員
企業型DCあり
合算で月5万5,000円
iDeCo部分は月2万円まで
合算で月6万2,000円
iDeCoの月2万円上限は撤廃
会社の事業主掛金によって、iDeCoで使える枠が変わります。マッチング拠出の有無も確認が必要です。
自営業者・
フリーランス等
月6万8,000円 月7万5,000円
年間8万4,000円増
国民年金基金との合算枠として確認が必要です。

企業型DCに加入していない会社員は、現在の月2万3,000円から月6万2,000円へ拠出枠が広がる予定です。月額では3万9,000円、年間では46万8,000円の差になります。

企業型DCに加入している会社員は、現在、iDeCoと企業年金をあわせた拠出限度額が月5万5,000円で、iDeCo部分は月2万円までとされています。改正後は合算で月6万2,000円となり、iDeCo部分だけの月2万円上限は撤廃される予定です。

自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者は、月6万8,000円から月7万5,000円へ引き上げられる予定です。月額では7,000円、年間では8万4,000円の差になります。

なお、上記は制度改正の概要を整理したものです。勤務先の企業年金、マッチング拠出、国民年金基金の有無などにより、実際に拠出できる金額は異なります。

加入可能年齢は70歳未満まで広がる予定

同じタイミングで、iDeCoの加入可能年齢も見直される予定です。

現行制度では、会社員は65歳未満、自営業者や専業主婦・夫は原則60歳未満までが加入対象とされています。改正後は、一定の条件を満たす人について、70歳未満までiDeCoを活用した老後資金づくりを継続できる方向です。

ただし、誰でも70歳まで加入できるわけではありません。主に次のような条件確認が必要です。

  • 70歳未満であること
  • 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をまだ受給していないこと
  • 勤務先の企業型DCや他の企業年金でマッチング拠出を実施していないこと

老齢基礎年金を繰り下げている場合や、老齢厚生年金を65歳から受け取る場合など、年金の受け取り方によって確認点が変わります。会社員や公務員は、特にマッチング拠出の有無に注意が必要です。

iDeCoは私的年金です。原則として国民年金などの公的年金制度との関係を前提に考える制度ですが、今回の改正により、60歳から70歳にかけて老後資金づくりを継続しやすくなる可能性があります。

特に恩恵が大きいのは会社員

今回の改正で、特に恩恵が大きいと考えられるのは会社員です。

企業型DCに加入している会社員の場合、これまではiDeCo部分が月2万円までに抑えられていました。改正後はこの上限枠が撤廃され、会社の事業主掛金次第で、iDeCoを使える余地が広がる可能性があります。

たとえば、企業型DCの事業主掛金が月1万円の場合、合算上限が月6万2,000円であれば、単純計算では残り月5万2,000円が検討枠になります。一方で、事業主掛金が月4万円の場合、残りは月2万2,000円になります。

ただし、実際の拠出可能額は制度設計や他の企業年金の有無によって異なります。会社としては、制度の概要を説明しつつ、個別の税務判断は専門家に確認してもらう姿勢が大切です。

掛金の所得控除も大きなポイント

iDeCoは「運用益が非課税」という点に注目されがちです。加えて、掛金が所得控除の対象になる点も大きな特徴です。

たとえば、月4万2,000円を拠出すると、年間の掛金は50万4,000円です。仮に所得税・住民税を合わせた税負担率を30%とすると、単純計算では年間約15万1,200円の税負担軽減につながる可能性があります。

税負担率が40%の場合は、年間約20万1,600円です。添付記事で紹介されている「年間約15万円」「年間約20万円」という考え方は、このような計算イメージです。

ただし、実際の税額は所得、控除、住民税、他の所得状況によって変わります。必ず同じ効果が出るわけではありません。社員説明では、具体例として示しつつも、個別の税額は税理士などに確認するよう伝えることが大切です。

受け取り方の選択肢と控除にも注意

今回の改正では、加入期間が長くなることで、受け取り方の選択肢も広がる可能性があります。

たとえば、iDeCoの資産を70歳まで非課税で運用し、その後90歳までの20年間で年金形式で受け取るといった設計も考えられます。終身年金そのものではありませんが、長期にわたって老後資金を取り崩す仕組みを作りやすくなります。

受け取り時に大切なのは、年金や退職金をできるだけ控除の範囲内で受け取るという考え方です。控除を超える部分は課税対象となり、所得税や住民税だけでなく、社会保険料に影響する場合もあります。

iDeCoの受け取り方には、主に次の3つがあります。

  • まとめて受け取る「一時金」
  • 分割で受け取る「年金」
  • 一時金と年金を組み合わせる「併用」

税制上、一時金には退職所得控除、年金には公的年金等控除が関係します。国税庁も、確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金は、退職所得とみなされる場合があると説明しています。

参考:国税庁 退職金を受け取ったとき(退職所得)

退職金がある会社は受け取り順にも注意

会社の退職金がある場合は、iDeCoと退職金の受け取り順にも注意が必要です。

添付記事では、いわゆる5年ルール、19年ルールに触れています。一般的には、iDeCoを先に一時金で受け取り、そこから5年以上の間隔を空けて会社の退職金を受け取ると、それぞれの退職所得控除を活用しやすいと説明されることがあります。

一方で、会社の退職金を先に受け取る場合は、iDeCoで退職所得控除を活用するために、より長い期間を空ける必要があるケースがあります。添付記事では19年以上の間隔が必要と紹介されています。

ただし、この部分は税制改正や受け取り時期、加入期間、退職金の有無によって判断が変わります。会社として社員に説明する場合は、「受け取り順によって税務上の扱いが変わる可能性がある」と伝え、個別判断は税理士などに確認してもらうのが安全です。

公的年金の繰下げも選択肢になる

iDeCoや会社の退職金を受け取っている間、公的年金の受給を繰り下げるという考え方もあります。

国民年金と厚生年金は、別々のタイミングで受給開始を選べます。公的年金は、受給開始を1カ月遅らせるごとに0.7%増額される仕組みがあります。

たとえば、iDeCoや退職金を先に活用し、公的年金の受給開始を遅らせることで、将来の年金額を増やす設計も考えられます。

ただし、繰下げが常に有利とは限りません。健康状態、生活費、配偶者の年金、税金、社会保険料などを含めて判断する必要があります。

中小企業が確認したいポイント

企業型DCを導入済み、または導入を検討している中小企業は、次の点を確認しておきましょう。

  • 会社の企業型DC掛金はいくらか
  • マッチング拠出を実施しているか
  • 社員がiDeCoを併用できる設計か
  • 社員にどこまで説明するか
  • 退職金制度との関係をどう整理するか
  • 受け取り時の税務をどこまで案内するか
  • 税理士、社労士、運営管理機関に確認すべき点は何か

特にマッチング拠出を実施している場合は注意が必要です。社員が企業型DC内で上乗せ拠出している場合、iDeCoとの関係を整理する必要があります。

企業型DCは、会社ごとの制度設計が重要です。単に「iDeCoの枠が増える」と説明するだけでは不十分です。

福利厚生としての説明が重要

企業型DCやiDeCoは、節税だけを強調する制度ではありません。

本来の目的は、老後資金づくりを支援することです。会社が社員の将来設計を支援する姿勢を示す点にも価値があります。

中小企業では、採用や人材定着に悩むケースが少なくありません。その中で企業型DCは、福利厚生や退職金制度の選択肢として検討できます。

ただし、導入すれば必ず採用に成功するわけではありません。社員に制度の意味が伝わってこそ、福利厚生として機能します。

社員説明で伝えるべきこと

制度改正を社員に説明する際は、次のように整理すると伝わりやすくなります。

  • 企業型DCありの会社員は、合算枠が月5万5,000円から月6万2,000円へ引き上げられる予定であること
  • iDeCo部分の月2万円上限が撤廃される予定であること
  • 企業型DCなしの会社員は、月2万3,000円から月6万2,000円へ広がる予定であること
  • 自営業者・フリーランス等は、月6万8,000円から月7万5,000円へ広がる予定であること
  • 加入可能年齢が70歳未満まで広がる予定だが、条件があること
  • 運用商品には元本割れの可能性があること
  • 受け取り方によって税務・社会保険料への影響が変わる可能性があること

社員にとっては、専門用語が多く感じられます。制度名や金額だけを伝えるのではなく、「自分にどう関係するのか」を説明することが重要です。

まとめ

iDeCoの制度改正は、企業型DCを導入している中小企業にも関係があります。

特に、拠出限度額や加入可能年齢の見直しは、社員の老後資金づくりに影響します。一方で、企業型DCの掛金、マッチング拠出、退職金制度との関係によって、対応は会社ごとに異なります。

企業型DCは、単なる節税制度ではありません。福利厚生、退職金制度、人材定着を考えるうえで活用できる制度です。

制度改正をきっかけに、自社の企業型DC制度や社員説明の内容を見直してみてはいかがでしょうか。

企業型DC・iDeCo改正のご相談

企業型DCやiDeCoの制度改正は、会社の掛金設計、従業員構成、退職金制度の有無によって影響が変わります。

金融財務研究所では、中小企業向けに企業型DCの導入支援や制度設計の相談を行っています。

福利厚生の充実や退職金制度の見直しをお考えの方は、まずはお気軽にご相談ください。

※本記事は企業型確定拠出年金およびiDeCoに関する一般的な情報提供を目的としたものです。税務・社会保険・労務上の取り扱いは、会社の状況や制度設計によって異なります。導入判断にあたっては、専門家に確認してください。

この記事は、添付資料をもとにWordPress掲載用として再構成した原稿です。制度内容や税務・社会保険の取扱いについては、公開前に最新情報をご確認ください。

Youtubeチャンネル
はこちら

お金のお悩み、動画内の図解ですっきりわかりやすく解説しています。
お役立ち情報満載ですので、ぜひご覧ください。

TOP